
「必ず儲かる」という甘い言葉を信じ、ネズミ講やマルチ商法に手を出す人が後を絶ちません。
特に最近では、20代を中心に若い世代がマルチ商法の被害に遭うケースが報告されています。ネズミ講とマルチ商法は勧誘方法が似ているため、同じものだと思っている人もいるようですね。このふたつには似ている点もあれば、異なる点もあります。
「必ず儲かる」という誘い文句に引っかからないためにも、ネズミ講とマルチ商法のシステムや構造について知っておきましょう。
<目次>
ネズミ講とマルチ商法の違い
<ネズミ講>
絶対に理解しておきたいのが、ネズミ講は違法だということ。
ネズミ講のシステムは「必ず儲かる」と約束して、高額な会費を要求します。新規会員を獲得すれば、受け取った会費の半分が自分のものになり、もう半分が上位会員のものになります。基本的に、ネズミ講は2人以上を加入させるため、加入者はネズミ算式にどんどん増えていきます。これがネズミ講と呼ばれる所以です。
勧誘するだけでお金が入るので簡単に手を出しやすいため、1960年~1970年代にはたくさんの被害者が出て、社会問題にもなりました。というのも、ネズミ講は絶対に破綻することが決まっているシステムだからです。1人が新規会員を2人ずつ加入させるのですから、会員はどんどん増えていきますよね。でも、人口には限りがあるため、新規会員になる人がいなくなってしまうのです。
・破綻することが決まっている
・下位会員は経済的な損失を受ける
この2つの理由から、1978年にネズミ講を禁止する「無限連鎖講防止法」が成立しました。
無限連鎖講というのは、ネズミ講のシステムのことをいいます。
<マルチ商法>
マルチ商法は、近年では「ネットワークビジネス」ともいわれています。ネズミ講と違うのは、違法とはされていないことです。
特定商取引法において連鎖販売取引と定義されています。具体的には、「この商品がおすすめですよ」などと商品を販売したり、「儲かりますよ」と言って組織の会員にさせることです。商品を販売することで利益が生まれ、会員にさせることでキャッシュバックを得ることができます。
商品は多岐にわたります。
・健康食品や健康器具
・サプリメント
・化粧品
・浄水機
・布団
・投資ソフトや競馬予想ソフト
・スポーツクラブ会員権
・旅行会員権
・ビジネススクールやセミナー など
ネズミ講は最終的に破綻するシステムですが、マルチ商法は商品を買う人がいれば破綻することはありません。
ネズミ講とマルチ商法の共通点
1.「必ず儲かる」という勧誘方法
ネズミ講もマルチ商法も「必ず儲かるビジネスがある」「働かなくてもお金が入る」などといって勧誘ケースがほとんどです。もちろん必ず儲かるわけがありません。儲けるには会員を増やさなければなりません。
2.上位メンバーが儲かるピラミッド型
どちらも基本的に2人以上を勧誘するため、下位になるほど人数が増えていくピラミッド型の組織です。自分が勧誘した人が会費を払ったり、商品やサービスを購入することでマージンや紹介料が入ります。そのため、上位会員ほどお金が入るシステムになっています。
3.口コミや紹介で広がっていく
どちらも広告を打つことはなく、口コミや紹介で会員を募ったり商品を売ったりします。広告費がかからないこと、さらに組織ではあっても会社ではないので経費がかかりません。
4.知り合いを勧誘する
ネズミ講もマルチ商法も知り合いを勧誘することがほとんどです。そのため、友達をなくしたり、信用を失って人間関係が壊れることがよくあります。最近では、TwitterやFacebook、InstagramなどのSNSで勧誘してくる事例が増えています。
5.会員がネズミ算式に増える
ピラミッド型の組織で、1人が2人以上を勧誘するため、会員がネズミ算式に増えていきます。ネズミ講の場合、人口には限りがあるため、やがて新規会員がいなくなり、組織として破綻します。
マルチ商法で禁じられていること
1.最初にマルチ商法の勧誘だと告げなくてはならない
マルチ商法に勧誘するときは、勧誘前に勧誘者の名前や目的を相手に伝えなければならないことが「特定商取引法 第33条の2」で定められています。
「久しぶりに会いたい」「紹介したい人がいる」などと言われて会ったら、実はマルチ商法の勧誘だったというパターンが多いのですが、これは違法です。
アポを取るときは「マルチ商法の勧誘をしたいから会いたい」と、はっきりと目的を伝えなくてはならないのです。騙されて呼び出されたときは、違法行為であることを告げてもいいでしょう。
2.「絶対儲かる」など嘘の表現をしてはならない
誇大広告や事実と大きく違う内容の話をすると、「誇大広告などの禁止」に違反します。儲かる話ばかりではなく、リスクもしっかり説明することが求められています。
3.一度断った人を再び勧誘してはならない
訪問販売に関する法律で「再勧誘の禁止」という項目があります。これは、一度断った人を再び勧誘してはいけないという規制です。マルチ商法にもこれが当てはまるため、何度もしつこく勧誘するのは違法になります。
4.クーリングオフについて正しく記載しなければならない
契約に合意したら、概要書と契約書の2種類の書類を渡さなければなりません。
契約書には、クーリングオフについての説明を、赤枠のなかに赤字で記載することになっています。クーリングオフについての記載がなかったり、説明がなかったりした場合は違法となります。
5.強引な勧誘をしてはならない
長時間拘束したり、複数人で囲むなど威圧的な言動をしたりすることは「特定商取引法38条3号」で定められている違法行為になります。もちろん、断った相手にしつこく勧めるのも禁止されています。
ネズミ講とマルチ商法のリスク
1.強引に契約させられる
「話を聞くだけだから」と軽い気持ちで誘いに乗ると、強引に契約させられるケースが多々あります。
複数人に取り囲まれたり、契約するまで帰してもらえなかったり、いますぐ契約するよう強制されたりと、よほど気を強く持っていないと断れない雰囲気になるのはよくあること。怪しいと思ったら、甘い誘いに乗らないのがいちばんです。
2.お金を払わされる
ネズミ講もマルチ商法も、まず最初にお金を要求されます。ネズミ講であれば現金を支払うことで会員になります。
マルチ商法であれば、勧められた商品を購入したり、会費や入会金を支払います。高額な商品を強引に買わされることもあるため、キャッシングなどで借金をする人もいます。
3.人間関係が壊れる
ネズミ講もマルチ商法も、新規会員を獲得しなければお金になりません。
人間、支払ったお金の元を取りたいと考えるのは当然のこと。友人や知り合いに次々と声をかけることになります。となると、「もう友達じゃない」「人を騙すようなことをしている」などと言われたり、仲間内で「あいつはマルチ商法に手を出している」「あいつとは会わないほうがいい」と陰口を叩かれることになります。
結果的に人間関係が壊れてしまいます。
これってマルチ商法?勧誘を見分ける方法
1.いきなり連絡してくる
しばらく音沙汰がなかった人がいきなり連絡してきて、「久しぶりにごはんを食べない?」「一緒にセミナーに行かない?」と誘うのが最も多いパターンです。それほど仲がよかったわけでもないのにおかしいなあ、と思いながらも会いに行くと、「実は絶対に儲かるビジネスがある」と切り出し、会員になるよう迫ってきます。
2.SNSで接触してくる
最近多いのがTwitterやFacebook、InstagramなどのSNSで勧誘してくるパターン。
例えば「起業の仕方を教える」という誘い文句で呼び出し、「起業するにはまずは身なりが大切だから」と言って高級スーツを買わせたり、「格安で海外旅行に行ける」と言ってセミナーに参加させ、旅行会員権を買わせるケースが報告されています。SNSは、相手の趣味や行動パターンがわかるため、マルチ商法のターゲットにされやすいといわれています。
SNSで急に接触してくる怪しい人には気をつけましょう。
3.夢や将来を熱く語る
マルチ商法にハマる人は、夢や将来について熱く語るのが好きな傾向にあります。「生きている目標はあるの?」「現状に満足しているの?」「この仕事には夢と可能性がある」など松岡修造も顔負けに熱くしゃべりまくります。具体性のない夢や将来について語る相手は要注意ですよ。
4.「会わせたい人がいる」と言ってくる
「会わせたい人がいる」と誘ってくるのも、よくあるパターンです。この場合、会わせたい人というのはマルチ商法の上位会員、つまり稼いでいる人です。実際に稼いでいる人を見せることで、目の前に餌を吊り下げる効果を狙っています。また、1人対2人の構図にして断りにくくさせる目的もあります。
ネズミ講とマルチ商法の断り方
ネズミ講であれば「法律違反だから」とはっきりと断りましょう。もしネズミ講に入会し、新規会員を勧誘したら20万円以下の罰金、勧誘を何度も繰り返すと1年以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。
「連絡をくれたときに、マルチ商法の勧誘だと言わなかったのは違法。違法なことはやりたくない」
「マルチ商法はやりたくないし、人を勧誘することもしたくない」
「いま断ったよね? 一度断ったのにまた勧誘するのは違法」
「しつこく勧誘するなら消費者センターに相談する」
「勧誘するならもう二度と連絡しないで」
曖昧な態度を取らずにきっぱり断らなければ、しつこくターゲットにされます。ネズミ講もマルチ商法も「必ず儲かる」と勧誘しますが、そんなにうまい話はありません。
くれぐれも気をつけてくださいね。